カロウト

現在読んでいる本に「カロウト」というものが書かれている。以前、別の本でも読んだことがあるが、メモしておきたい。

カロウトとは、縦三尺五寸・横二尺五寸・深さ二尺の箱で、大工がこれを作った。嫁入りする娘は、みなカロウトを作ってもらい、そのなかに衣類などの嫁入り道具を入れて嫁ぎ、一生この箱を使った後、自分が死んだときはそのカロウトを棺桶として埋葬してもらうという習慣があった。男の場合も二〇歳になるとカロウトを持つことになっていたという。(中略)嫁入り→生活用具→棺桶、と一つの民具がじつに有効に利用されていたのである。それは、人生儀礼の要所で重要な役割を果たした。人生の「ハレ」と「ケ」において常にその持ち主と深くかかわったのである。「カロウト」は新しい生活のスタートで人生の終焉を見つめさせた。このことは人生の有限性を自覚させ、よって人生を豊かなものにさせた。

以上、引用は
野本寛一「生態と民俗 人と動植物の相渉譜」
講談社学術文庫、p.254、2008
より。